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若狭砥石ー田村山産 [砥石]

001、若狭砥石.jpg

 京都は舞鶴市の越後さんから楽しみにしていた砥石が2丁送られて来ました。  田村山戸前層浅葱、超硬口の仕上げ砥石です。

 越後さんの本業はまったく砥石には縁のない仕事ですが、前職では少し鉋やノミを使っていたこともあり、「天然砥石はいいものなんだ」という知識やあこがれはあったのだそうです。ある日お子さんとの散歩の途中に河原で一個の石に目が留まり、「砥石ではないのか?」と拾って帰ったことから全てが始まったのだとか。

 調べてみるとどうやら自分の住んでいる所まで砥石の層が延びているらしいこと、さらには、昔ほんのわずかの間、地元で砥石の採掘がされていた時期があったことなどが解って来て、近所の山を探すうちにお年寄りからの情報もあり、とうとう場所を見つけて砥石を生産し始めたという、なんともびっくりの物語なのです。
 
 (詳しくは彼のブログを見て下さい。http://blogs.yahoo.co.jp/nao_nao_5021


 さてこの若狭砥石はいかなる質のものなのか?

002、中山.jpg

 比較のために、これは僕が持っている2丁の中山のうち超硬口の石です。油断すると地金をガリッと引っ掻くじゃじゃ馬。送られて来た若狭砥石はこれとほぼ同じ硬さでした。そして実際に研いでみると、



003、若狭砥石のトクソ.jpg

 地金をほとんど引くこともなく、しっとりと研げる。しかも中山と比べると音がまったく違いました。僕の中山はサリサリと音がするのに若狭の方はスースーと静かなのです。これは期待がふくらみます。

 まず、軽くトクソラップをして顕微鏡で比較してみました。



003、中山ー細かい.jpg

 中山でのトクソラップで細かく見える部分です。砥粒が付けた傷の深さにばらつきがあるため、刃先の波の深さにもばらつきがあります。


004、中山ー荒い.jpg

 右寄りの場所に明らかに荒い砥粒が付けた傷が深いえぐれになっているのが解りますね。この深さは2ミクロン近くあるでしょうか。波の平均深さは1〜1.5ミクロンくらいですね。この刃の状態ですと5ミクロンくらいが限界かもしれません。




005、若狭ー細かい.jpg

 若狭砥石です。これを見た時はびっくりしました。中山とまったく違うのは深い傷がほとんどなく、傷の深さが揃っていることです。イメージで言うと先ほどの中山が#4〜6000だとするとこの若狭は#5〜6000というイメージでしょうか。

006、若狭ー荒い.jpg

 荒いところを観察しても先ほどの中山よりはおとなしい。波の平均深さは1、数ミクロンという感。もう少し丁寧に研げば3μは可能でしょう。




007、トクソラップ.jpg


 今度は本気のトクソラップをしてみました。最後の仕上げに使っている範囲は鉛筆の先が示す乾きかけの平行四辺形の範囲です。トクソラップの極意は水が乾きかける寸前のねばりがある状態、つまり砥石表面にトクソが張り付いたような状態だと思います。
 
 (ただ、この若狭砥石は固定砥粒で研いでもなかなかいい刃が付きます。砥粒が揃っていることと滑らかさがあるからでしょうか。面白いことです。)
 

008、若狭ーティッシュ切り.jpg

 波の深さにそれほど違いはありませんが、波がなめらかになっています。この刃で「ティッシュ切り」に挑戦して、何度か研ぎ直してようやく切ることができました。



009、ティッシュ切り.jpg

 作業台にティッシュをテープで止め、鉋の耳から切り込んで、下に下ろして行く。今ティッシュの繊維は水平方向に走っています。ティッシュが裂けずに下まで切り下ろせたらその刃は研ぐことの極限です。これはどなたが始められたのかわかりませんが、研ぐことの限界を知る上で本当に勉強になります。

 天然砥石でこれが出来たのはほぼ初めてのことでした。刃物がそもそも良いこと、刃角度が26度とか鋭いこと、先裏の面積が極小であることなどの複合要素もあるのですが、やはりこれを可能にした天然砥石は極めて上質と言えます。今まで硬い天然を極硬GCやダイヤモンド砥石で均して尖った山を削ってしまい、それでなんとか使いこなしていたわけですが、そういう余計な手間のいらない天然砥石はお値段なりには存在するのだろうとは思っていました。ただそのお値段とはどうしても数十万にはなってしまうでしょう。それはなかなか手の届かない夢のようなものであったのです。

 ところがこの若狭砥石は「その次元(例えばマルカなど)はこういうことであろう」ということを体験させてくれたのです!小振りの物は8000円ほどからですから、ほんとに有り難いことですね。



 さて若狭砥石のトクソラップでの削りもしてみました。

011、鉋くず.jpg

 これは米ヒバの軽くて柔らかく、いい刃が付いていないと削りにくい個体ですが、いいカカリ具合でした。



010、3ミクロンの鉋くず.jpg

 薄削り用の材でなら、ちゃんと3ミクロンが出せました。(鉋は玄妙)





 副業として始めた越後さんの砥石販売ですが、彼の話を聞いているとお金が重要なんじゃないと思えるのです。もっと純粋な探究心とか興味とか郷土への愛情を感じます。

 かつて札幌にも昭和18年から20年に砥石を取っていた場所があり「砥石山」という名で残っています。若い頃探しに行き、今でも持っています。そんなこともあって尚更に理解できる気がするのです。

 地元に砥石が眠っていた。地元の人でさえ忘れかけていたその石がなかなかに優秀であったとしたら、多くの人に知ってほしいと思うのはごく自然な気持ちでしょう。彼の動機は純粋です。あくまで副業として始めたことですから、その加工もほとんどが手作業です。細く長く続けてほしいので気長に応援してあげたいものですね。



 越後さん、すばらしい体験をさせてもらえました。ありがとう!




 越後尚亮さんとの連絡は本業に差し支えないようにメールがお勧めです。
  naoaki7028@gmail.com

 天然砥石のブログ  http://blogs.yahoo.co.jp/nao_nao_5021






コメント(3) 

コメント 3

やまとも

なんとも良い話ですね~^^
私も高知の山奥に砥石が落ちている川があると聞いて、探しに行った事があります。
質的には粗い目の中砥ですが、地元の伝承としても面白いので、今も手元に置いてあります♪
by やまとも (2014-01-29 18:02) 

kuni

>やまともさん、好きですねぇ〜。僕もね、天然の中砥は7、8丁あるかなぁ、沼田、なつや、びんすい、五十嵐、虎砥、う〜ん、あとは思い出せなくなってきました、、、。たまになつかしくなって使ってみるんですけど、青砥の他はきびしいですよね。青砥は今でも存在価値はありますね。切れ刃青砥裏#8000の組み合わせは実践ではかなりいけますよ。そんな組み合わせ、やったことありますか?
by kuni (2014-01-30 00:05) 

COLE

楽しく読みました
砥石があって作品ができる
満喫しています
by COLE (2014-02-11 12:42) 

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